選考会抽選に落ちて、終わったTJAR挑戦

2024年のTJARにエントリー。
書類選考は無事に通過したものの、2024年は書類通過者が多く、選考会に参加できる選手を決めるため抽選が実施された。結果は落選。予定も含めて空っぽになった虚しさ半分と、どこかホッとした安堵感半分だった。

安堵感の理由のひとつは、剱岳に登らなくて済んだこと。
地面に足がしっかりついている場所は大丈夫だけれど、高くて切り立ったところは本当に苦手。ロープウェイもジェットコースターも怖いし、東京タワーのガラス床に立つのも生きた心地がしない。だから槍ヶ岳や剱岳に登りたいと思ったこともない。

エントリーした理由

走り始めて約8年。気がつけばトレイルもロードも長い距離を走れるようになっていた。
そんな自分に、最難関(日本一過酷な山岳レース)といわれるTJARに挑戦する資格があるのか?そして、どこまでできるのか試してみたい。理由はシンプルにそれだけだった。

バックヤードウルトラで最後の1人になることも、フルマラソンで2時間40分を切ることも、自分にはまったく想像できない。だから「最難関」といっても、それは人それぞれだと思う。

挑戦して良かったこと

参加条件の課題に取り組む中で、必要な装備や体力を含めてTJARという大会がどういうものなのか、より理解できた。
もし挑戦しようと思わなかったら、宿泊装備を背負って1日50kmを歩くこともなかっただろう。

TJAR本大会を想定した長時間・高負荷(コースタイム《以下CTと略》20時間以上、CT比70%以下のスピード)で行動する中、標高2,000m以上の*³キャンプ指定地(北海道は標高1500m以上)において*4 4泊*5ビバークスタイルでのキャンプ経験があること。ただし2泊3日以上の行程を少なくとも1回含むこと。申し込みにあたって、*6写真のデジタルデータを添付のこと。また、その比率(実際の行動時間*7/CT)を参考値として提示のこと。

上記の内容を満たすために歩いた行程は以下の内容。

課題行程の記録

南アルプス 2泊3日

仙流荘 → 熊の平小屋 → 塩見岳 → 北岳 → 白根御池 → 鳳凰三山 → 千頭星山 → 甘利山 → 白山温泉
合計108km(CT比61%)

2日目は疲労と標高約3,000mの影響で片頭痛に。3日目、苺平から千頭星山への波線ルートは人とすれ違うこともなく、山深く静かな美しいトレイルだった。課題がなければ訪れることのなかったルートだと思う。

北アルプス 1泊2日

室堂 → 薬師峠 → 黒部五郎の肩 → 上高地
合計78km(CT比51%)

剱岳以降のTJARコースを辿る縦走。2日目は「シャワーを浴びて帰りの高速バスに乗りたい!」という一心でひたすら歩き続けた。槍ヶ岳山荘から上高地までの下りがとにかく長かった。

薬師岳からテント場に向かう途中。
この日は山の日でテント場も満員電車状態。

奥秩父 1泊2日

鴨沢 → 甲武信小屋 → 奥多摩
合計96km(CT比58%)

朝7時30分に鴨沢を出発し、20時前に甲武信小屋に到着。飛龍山を過ぎたあたりで熊を見かけ、それ以降は怖くて音楽を流しながら歩き続けた。

二日目はずっと小雨。

一年経って思うこと

「また次回大会を目指したいか?」と聞かれたら、今のところその気持ちはない。
理由は大きく3つある。

他にも挑戦したいことがある

スパルタスロン、ウエスタンステイツ100、トルデジアン、バックヤード、スペイン巡礼の道の続き…。挑戦したいことや行ってみたい場所はまだまだある。2024年11月に走った沖縄本島1周サバイバルランもそのひとつ。
自分にとってTJARはいくつかある選択肢の一つで、課題に取り組みながら何年も待ち続ける強い想いや憧れは今はない。むしろ、そういう強い想いを持った人が多いレースなんだと感じる。

気ままに歩く方が楽しい

コースタイムに追われ、夜明け前から歩くよりも、好きな時間に好きなコースを宿泊装備で縦走する方が自分には合っている。山頂でゆっくり朝日を眺めたり、山小屋で美味しいご飯を楽しみたい。
課題は長時間・高負荷のトレーニングとしては良い内容だし、好きな人もいると思う。でも自分は「自由に歩く」方が性に合っている。

白根御池小屋で食べたアイス

抽選ルールへの違和感

直前に抽選対象者の条件が変更され、「前回完走者は抽選対象外」となった。


*要項において選考会の抽選対象として書類選考合格者及び前回完走者となっておりましたが、訂正して抽選対象は「書類選考合格者(前回完走者、前回優勝者を除く)」とします。
これまで前回完走者はスタッフ参加を条件として選考会の審査対象外としておりました。これは実績のある選手であれば選考の場は不要。より多くの人へ選考会参加の機会を与えるための措置でした。この抽選に前回完走者を入れてしまう事は数少ない選考会枠を有効に活かせなくなり、当初の意図が反映されなくなります。訂正してお詫び申し上げます。

意図は理解できるしもっともだとも思いつつ、選考会を通過する人数が多い場合、新規参加者は再度抽選。前回完走者は一度で済むというのを考えると、前回完走者を優遇する措置にも感じた。
参加要件や条件を厳しくするのであれば、できるだけ記載通りに運営してほしい、というのが正直な感想。
このレースに限らず、安全管理などを考えると、前回完走者が多い方が運営は楽だろうなと思いつつ、前回完走者が優遇されるレースはあまり好きではない。

    もともと「スタートラインに立つこと」が一つの目標だったので、書類選考を通過できた時点で、その目標の2割くらいは達成できた気がしている。挑戦するにあたり、アドバイスをくださった方々には本当に感謝。

    そして、2024年大会の途中、北アルプスですれ違った選手たちはみんな本当にかっこよかった。