滋賀一周ラウンドトレイル2022を振り返る|レース結果とその後

自身にとって過去最長のレースだった滋賀一周ラウンドトレイル2022(通称 シガイチ)。まずはレース結果と走ってみて感じたことを中心に振り返ってみる。

レース概要

2022年が第1回大会となったシガイチは、2022年4月30日から5月8日まで9日間で開催。大津港をスタート・フィニッシュ地点として、琵琶湖を中央に望みながら、反時計回りに滋賀県境を1周する縦走大会で総走行距離438km、累積標高28,300m(手元の計測では32,500m)制限時間8日間という超ロングレース。

一部県境ではない箇所もある。岐阜県・福井県などこれまで行ったことがないところだった。

2019年に開催されたプレ大会では、1日ごとに進むステージレース形式での開催だったが、今回はイタリアの超長距離レース、トルデジアンをモデルに、LB(ライフベース)で休憩をとりながら制限時間192時間以内にフィニッシュを目指すレースとなった。

目標と予想タイム

レース1ヶ月前に行動計画表という形で、自身の予想タイムを大会運営に提出する必要があり、作った予想タイムは170時間。

GPXを元にヤマレコでトレース。コースタイムに対してどれぐらいのペースで進めるのか計算。ルートがない箇所は1km 20分で計算した。

丹羽さんのFKTのタイムとヤマレコのコースタイムなどを参考に作ってみたものの、それまでのレース最長距離はKOUMI100の175km。その約2.5倍の距離。疲労や睡眠も含めて自身がどういう状態なのか、全く想像がつかない中で作成したので、全く実感が無い予想タイムだった。
順位はあまり考えず、参加人数が60人だったので何となく20位以内だったら良いなぐらいのイメージ。

レース前の怪我。膝の痛み

レース3〜4週間前に右脚を打撲。打撲した瞬間はそれほど気にしていなかったが、時間が経っても痛みが引かず、自宅の階段を登り降りするだけでも違和感と痛みを感じる状態で、近所の公園を10kmも走れなくなってしまった。
当初の予定では2週間前から練習量を落とす予定でいたが、とにかく治すことに専念して整体と針治療にほぼ毎週通った。鍼治療に通ったのは初めて。治療のおかげでレース当日までには痛みも違和感も軽くなったものの、どこまで行けるのか?不安な状態でのスタートだった。

レース前最後の調整で歩いた南高尾

結果:166:58:38で完走

4月30日10時に大津港をスタートして、5月7日 8時58分38秒にフィニッシュ。
レース前の想定よりも3時間ほど早い、166時間58分38秒で無事に完走できた。

自分が5月6日。1日違いで妻が5月7日が誕生日だったのでケーキを持ってフィニッシュ。Photo:Susumu Saishoji

武奈ヶ岳付近から一緒に走っていた稲垣さんと「ここまで来たら順位気にせず、深夜の暗い時間ではなく明るい時間にゴールしたいですよね」と話ながら最終エイドの1つ手前、還来神社に着いたのが夜7時頃。
(稲垣さんはペーサーとサポートを引き受けてくれた中谷さんがいる間にフィニッシュしたいと話していた)

左が稲垣さん。右側は最終区間のペーサーを引き受けてくれた荘司さん。

大津港(フィニッシュ地点)まで約37km。到着時間を10時頃に想定して、還来神社で2時間程度の仮眠をとって24:00過ぎに大津港を目指して出発。レース前に想定していた時間よりも3時間ほど早くフィニッシュ。順位は終わってみたら14位。自分で想像していたよりも良い順位だった。

最後の仮眠スペースがあった還来神社

睡眠と補給

レース前の予定では、1日目は睡眠を取らず、2日目以降3時間〜4時間睡眠を想定していた。
実際は2日目LB2(朝明茶屋キャンプ場・114km地点)に着いたのが夕方16時頃。シャワーを浴びて食事をとった後、少し眠ろうと仮眠室で横になってみたものの、寒さもあり結局この日は眠ることができなかった。

朝明茶屋キャンプ場で食べたカレーライス。

睡眠時間を確保できたのは3日目LB3(上平寺ゲストハウスうむ・179km地点)。ここで約2時間眠ることができた。
4日目以降は1日約2時間の睡眠をルーティーン化できたことで、コース途中では一度も仮眠を取ることなく比較的スムーズに進むことができた。

LBでの滞在時間はおよそ4時間。到着後、約1時間(食事+休憩)→睡眠2時間→約1時間(食事+準備)。その時の気分で出発時間を決めて仮眠。食事も含めた前後の準備動作があまりに遅く、途中から合流した妻からは老人を見ている様だと言われた。

LB5 国境・願力寺。ここではお寺の中で眠ることができた。

レース中の膝の痛み

1日目、2日目と距離を重ねるごとに右膝が少しずつ痛みだし、それをかばったことで、バランスが崩れて今度は左膝が痛みだし、登りは左膝、下りは右膝が痛む状態で、レース前半は我慢の時間帯が長く続いた。

LB2(114km地点)で所属しているランニングクラブのコーチちゃんぷさんに貼って貰ったテーピングのおかげで、我慢できる範囲の痛みで済んだこと。LB3(179km地点)であしラボの小野寺先生による施術。そして、いただいたアドバイス「登りで体重が乗る時間を少なく、早く軽く動くこと」を意識して動くことで、LB4(235km地点)ぐらいを境に少しずつ痛みが軽減。

途中、気がついたら脚がテーピングでほとんど見えない状態だった。笑。

LB5(276km地点)では聖整体の方にテーピングの調整とマッサージ。さらにA20栃生(375km地点)でもマッサージしていただいた。ここではそれまでの眠気と疲労と気持ちが良さで思わず寝落ちしていた。(笑)

結果、武奈ヶ岳に着く頃にはほとんど痛みは感じない状態になり、最後のエイドステーションから大津港までの約10kmはとにかく気持ち良く走ることができた。

最後、大津港に下る直前。

レース後の疲労と睡眠

シガイチ後の体調はどうなんだろう?と思っていたけど、実際に終わってみると筋肉痛もほとんどなく、レース中に痛かった膝の痛みも無くなっていた。(レースから3カ月経過した現在も痛みなく走ることができている。)

これまでに走ってきたトレイルランニングのレースとは移動スピードが違って歩く時間が長く、膝の怪我もあったので、できるだけ脚に負荷がかからない無理のないペースで進んでいたことが、結果としてレース後に筋肉疲労が少なかったことに繋がっているように思う。

レース2日後の脚。思ったよりむくみもなかった。

筋肉疲労とは逆に、大変だったのが睡眠。

終わった当日はある程度眠ることができたが、翌日以降、3時間おきに目が覚めてしまう眠りが浅い日が4〜5日間ぐらい続いた。
ピークはレース翌々日の火曜日。深夜2時ぐらいにまだレースが終わっていないような感覚で目が覚めてしまい、もう終わっているはず!と思いながらも、確認するために携帯で自分の位置を確認。自宅にいることを確認してまた眠りについた。

レースに向けて取り組んだこと

シガイチのような超長距離のレースに向けた練習メニューで正解があるのか分からない。

今回、シガイチに向けて意識的に取り組んだことは「できるだけ毎日身体を動かすこと」。

レースでは毎日走ることになるので、その耐性が少しでも高まればと考えて少しでも走る。走れない日はZwiftもしくは筋トレ・ヨガなど、アクティビティに費やす時間を増やしてみた。無事に完走できたので大きく間違ってはいなかったかな?と思いつつも、正解かは分からない。

2月のトレーニングカレンダー

ペーサーとサポート

自身の足でどこまで行けるのかを知りたくて走っているところもあるので、ペーサーやサポートをつけるのはあまり好きではない。
それでも今回は全く想像がつかない距離と時間、コース上にマーキングが無いルートファインディングが必要なレースだったので、3人のペーサーとサポートに1人ついてもらった。途中でサポートしてもらった方も含めると4人の方にサポートしていただいた。(事前に申請が必要だった)

ペーサーとサポートがいることのメリットはルートナビやペース維持、洗濯、補給食(食べたいもの)の買い出しなど、色々とあるが、自分が信頼している人が傍にいることの安心感と、LBで待ってくれている人がいる安心感が一番大きかった気がしている。

LB3〜LB5(約100km)の区間ペーサーを引き受けてくれた藤田さん。
LB4からサポートについてくれた圭さん。
ボランティア後に応援に来てくれた小沼さん(左)とLB5〜LB7 高島トレイルの歩行区間のペーサーを務めてくれた蓮さん(右)

ゴールデンウィークの貴重な時間を自分のこのレースのために費やしてくれた、ペーサーの藤田さん、荘司さん、蓮さん、サポートの圭さん、久美子さん、妻とお義父さん、応援いただいた方々には本当に感謝している。(奥信濃100のレースで一度しか会っていないのに、ペーサーとサポートを引き受けてくれた荘司夫妻ありがとうございました。)

シガイチを完走してみて

フィニッシュした瞬間は達成感というより、帰ってこれた安堵感・安心感のような感覚だった。
そして、このレースを完走したら走ることに飽きてしまうかも?と思っていたけどレースから4カ月が経過してみて、ネガティブな気持ちの変化はなく、逆にこの距離でも楽しめたことでより可能性が広がったような気がしている。

膝が痛くて階段を降りるのが辛かった早朝の伊吹山

準備期間も長くスタートラインに万全の状態で立つことの難しさを感じたシガイチ。
なかなか辿り着かない鎌ヶ岳、朝明茶屋キャンプ場、金糞岳。強風でとにかく寒かった竜ヶ岳。急登・激下りの連続だった余呉トレイル、ルートが不明瞭で大変だった高島トレイルなどなど、ツラい時もキツい時もありながらも、途中でリタイヤしたいと考えたことは一度もなかった。そしてツラい時以上に楽しい瞬間も多かった。
(コースの振り返りはまた次回)

鈴鹿山脈から見た伊勢湾の夜景

もう一度走れる機会があれば走ってみたい。ただ準備も含めてレースに費やす時間と費用を考えると現実的ではないのと、違うレースに出てみたいとも思う。
まず2023年はこれまで走ったことがない、ロードのウルトラマラソンに挑戦してみたい。

同じランニングチームの川畑さんが約11間後にフィニッシュ。なぜか自分がフィニッシュしたより感動した。